―――  ラブ・ゲーム 1  ――― 



 明日で地球が無くなると言われたら、誰だって驚くだろう。
 めったに人前で感情を露にしない冷血漢とされている速水真澄でさえ心底驚いた。
 本当に地球が無くなる訳ではないが、それと同じ衝撃を義父速水英介の言葉を聞いて
受けたのだ。信じられなかった。今聞いた事は、本当に英介の口から語られた事なのだろうか。
 まじまじと英介の隣に座る小柄な女性を、真澄はじっと見つめる。紺色のワンピース姿
はしっかりとした印象を受けるが、どう見ても35歳の真澄より年下だ。おそらく10代
後半から20代前半ぐらいだろう。そんな小娘を「母」と呼べる訳がない。
 なのに彼女は、初対面で「お母さんと呼んでね」、とハッキリ口にした。
目の前に英介がいなかったら、ふざけるな!呼べる訳ないだろう!と、怒鳴っていた所だ。
 真澄はフーッと深く呼吸を吐くと、気を落ち着かせるようにテーブルの上のコーヒーを口にした。
銘柄は真澄の好きなブルーマウンテンで問題はなかったが、ぬるかった。
リビングに運ばれて来てから10分以上放置されていた為だ。
 真澄はコーヒーを飲む事をあきらめ、テーブルを挟んでソファに座る彼女と、車椅子の英介を睨んだ。
そして、言うべきことを口にした。

「お義父さん、本気で言ってるんですか?息子の僕よりも年下の子と結婚するなんて!
年を考えて下さい。もう六十を過ぎているんですよ。少しは大都グループ一万人の
上に立つ会長としての立場をお考え下さい。僕は絶対二人の結婚を認めません!」

 真澄の剣幕に彼女の顔からすましたような笑みが消え、怯えた表情だけが残った。
「恐がらなくて大丈夫だよ」
 英介が聞いた事のない、優しい声を彼女にかけた。真澄は背筋がゾクっとした。
堅物の英介が女性に対してそのような言い方をしたのを、初めて聞く。
 仕事に対しても、真澄の母に対しても、厳しい一面しか見せて来なかった英介が別人の
ように穏やかに見えた。それは縁側で日向ぼっこを楽しみながら、膝の上の猫を可愛がる老人のようだった。
英介も年を取り、少しは丸くなったのか。それとも、彼女との恋ですっかり骨抜きにされてしまった姿なのか。
 いや、英介から刺々しさが抜けた瞬間を幼い頃にも見た事がある。それは紅天女だ。
演劇界の幻の名作、紅天女の舞台の話をする時だけは、機嫌が良かった。
「真澄、芸能ごとに疎いお前でも紅天女の事はわかるだろう。彼女はその舞台を受け継い
だ女優の北島マヤだ」
「えっ」と真澄は意外な心地になる。
「先日は舞台観に来て頂きありがとうございました」
 彼女が礼儀正しくお辞儀をする。英介に付き合って舞台を渋々観に行った事を思い出した。
 紅天女は劇作家尾崎一連が大女優月影千草の為に書いた演劇界の名作だ。上演権を持つ事は紅天女を
演じる事が許された女優ただ一人にしか認められていない。その為、紅天女が舞台以外の表現方法で
世に出る事はもちろん、月影千草の意向を無視して上演された事はなかった。誰もがその上演権を欲しがり、
月影千草の前に札束の山を積んだが、月影千草は自分の認めた女優以外には上演権を譲るつもりはないと、
全ての誘いを断ったのだ。政財界に大きな影響力を持つ、速水英介でさえ手出しは出来なかった。
 なるほど。彼女が月影千草から上演権を受け継いだ女優北島マヤかと、真澄は初めて好奇心に満ちた目を向ける。
 しかし、実際に会う北島マヤは舞台上での印象とは違い、普通の女の子にしか見えない。
本当に神秘的な天女をやっていたあの女優と同一人物なのかと思う程だ。
 顔立ちも美人とは言えず、地味な印象だ。でも、黒々とした大きな瞳は何か力強いものを秘めているようにも見える。
「紅天女と聞いて北島さんと結婚したい理由が少しわかりました。お父さんは紅天女に人生をかけてきましたからね」
 それも異常な程に。英介の紅天女コレクションを飾った部屋が火事になった時、
英介は足の自由がきかない自分の代わりに、妻に炎の中紅天女の打ちかけを取りに行か
せたのだ。そのせいで真澄の母は、大きな火傷を負い帰らぬ人となった。
 母よりも紅天女を優先させた英介を当然恨み、憎んだ。紅天女と耳にするだけで腸が煮えたぎる。
目の前にいる北島マヤにもいい感情は持てなかった。
「そうだ。会社を作ったのも紅天女を上演するためだったんだ。彼女は月影千草の愛弟子
でね。千草と結ばれる事は叶わなかったが……、マヤがわしのプロポーズを受けてくれたんだ」
「呆れますね。プロポーズする方も、受ける方も。君、そんなに金が欲しいのか」
「ち、違います」
「嘘だ。若い女が、金目当て以外の理由で車椅子の老人と結婚する訳がない」
 マヤは目を丸くして、真澄を睨む。
「違います!英介さんの紅天女に対する篤い心に打たれたんです」
「誰がそんな詭弁信じるか!いい加減にしたまえ!人の家にズカズカと上がり込んで来て、
年下の女の子に『お母さんと呼んで』なんて言われた方の身になってみろ!俺は君を
母親だなんて絶対に思わないし、家族だとも思わない!家族ごっこがしたいなら、ここ以
外の場所でやれ!二度と俺の前には現われるな!」
 こんなに腹が立ったのは母が亡くなって以来だ。
「お父さん、彼女と結婚するなら、僕は親子の縁を切ります。どうぞ、後は勝手にして下さい」
 そう言い、真澄はリビングのドアを勢いよく閉めた。全く頭に来る!せっかくの日曜日
が台無しになったと、真澄は舌打ちした。
「出かける!」心配するようにまとわりつく執事の朝倉に告げ、真澄は屋敷を出た。



2
  バー「ブルーノート」は麻布十番にある雑居ビルの一階に入っていた。
有名なジャズクラブと同じ名を付けたのは、真澄と同じ大学に通っていた三浦高雄だった。
 三浦は銀座にある老舗のバーでバーテンダーとしての修行を積み、五年前に念願だったジャズバーを開いたのだ。
 真澄はオープンした日から、週に一度の割合で通っていた。
 三浦自慢の楢の無垢材で作られたバーカウンターを、真澄は気に入っている。客席は全部で二十あり、
その広さが真澄には丁度良かった。それに三浦の影響で大学に入ってから聴きはじめたジャズも好きだった。
この店の売りは毎晩聴けるジャズの生演奏と、三浦秘蔵のジャズの名盤にあった。
 しかし、この夜の真澄はジャズを楽しむ余裕がなかった。何を聴いても北島マヤに会った苛立ちと、英介への怒りが募った。
「お代わり」
 真澄は空のグラスをカウンターの前に立つ三浦に突き出した。
ウィスキーをストレートで5杯飲んだが、まだ飲み足りない。
「ペースが早いんじゃないか」
 三浦が心配するように真澄を見る。
「飲まずにいられないだろう。俺よりも年下の小娘と親父が結婚しようとしてるんだから。
冗談じゃない。俺は絶対許さない!」
「気持ちはわかるけどな」
 三浦は手早くグラスにウィスキーを注ぐと、真澄に渡した。
 真澄はそれをつまらなそうに飲む。まろやかな香りと、ほのかな甘味を感じるが、
いつも飲んでいる銘柄とは違う味のような気もした。
 三浦に念のため銘柄を確認すると、いつもの「響」十七年物である事がわかった。
二十代の頃はジャックダニエルなどの外国のものを好んでいたが、今は日本産のウィスキーが飲みやすくなった。
余市、竹鶴、山崎、白州と飲み渡り、今は響が真澄のお気に入りだった。
 けれど、好きなウィスキーも今夜は一味足りない気がした。
それは北島マヤの事を引きずっているからだろうなと、アルコールが回る頭で思う。
「なぁ」と、考えるように真澄は三浦を見て、「北島マヤっていくつだ?」と口にした。
「うーん、確か、二十四とかじゃなかったか」
「俺より十一年下か。おやじとは三十以上年下……」
 ため息しか出なかった。何が悲しくてそんな小娘に母親面されなければならないのだ。
しかも真澄が目の仇にしている紅天女女優。拒絶以外の感情しかない。
「……紅天女だと、ふざけるな」
 紅天女という言葉を聞くと、条件反射のように二十年前の火事を思い出す。
打ち掛けなんかの為に、燃え盛る炎の中に母を飛び込ませた英介の冷酷な行為を思うと、
悔しさで胸が焼ける思いだ。
 英介は母が取って来た打ちかけを、礼の言葉もなくひったくるように手にした。
母の状態よりも、打ちかけにしか心が向いていなかったのだ。
 母が倒れても、入院しても、死んでも英介は無反応だった。
「真澄、お父さんを頼むね」と、病室のべッドでの最期の母の言葉が今も記憶にこびりついていた。
 最期まで母は父を心配していた。なのに父の頭にあるのは紅天女の事ばかり。
いつか英介を刺し殺してやろうと、本気で思っていた時期もある。
だが今は、英介の敷いたレールの上を大人しく歩いている自分しかいなかった。
あれほど憎んだ父の側にいるのは、母の最期の言葉があったからだ。
あの言葉が殺人者になる事を思いとどまらせた。そしていつか、英介が手にしている権力
の全てを奪い取り、英介の目の前であの打ちかけを燃やしてやろうと思った。
だから母が死んだ日から二十年、ガムシャラに生きてきた。
 そのかいあって今は、大都グループの要である大都物産の社長をし、順調に業績をあげ
ている。十年後には英介を大都グループから追い出すだけの権力を持つ事が出来るだろう。
そしてグループ全体のトップになった時は、切り刻んで外資にでも会社を売りさばくつもりだ。
その時の英介の、悔しがった顔を見てやりたい。一代で築き上げたグループ会社が無残に
解体される姿を目にして、英介も少しは絶望を知るだろう。いい気味だ。
それだけが真澄の生きがいだった。
「北島マヤ、むかつくな」
 英介に取り入って彼女が何をするのか心配だった。
真澄の計画の邪魔になるような事をしなければいいが。
一見純朴そうに見えて、案外あの女は強(したた)かかもしれない。
13歳で月影千草に見初められ、女優になった子なのだ。あまたのライバルを蹴り落として、
上りつめて来たはずだ。真澄でも知ってる、天才女優の姫川亜弓まで蹴り落とし紅天女を掴んだのだ。
「くそっ、なんであんな小娘と親父は結婚するんだ」
「親父さんの結婚を阻止したいなら、いい方法がある」
その言葉に真澄は興味深く、三浦を見た。
「小娘を誘惑すればいい。お前昔から女にもてたじゃないか。
小娘一人、お前の魅力で落とすのなんて訳ないだろう。そうすれば結婚は破談になる」
 三浦が本気とも冗談ともつかない笑みを浮かべた。
「何言ってるんだ。誰があんな小娘なんか相手にするか。冗談じゃない」
 バカバカしいと思いながらも、完全に否定出来ない思いもあった。
 確かに北島マヤと関係を持ってしまえば、親父は手を引くかもしれない。
それに北島マヤだって、親父と結婚する気がなくなるだろう。そんな事を考えながら、
やっぱり出来ないと思う。確かに女性にはモテる方だったが、恋愛音痴なのだ。
男女のかけひきとか、そういうものは苦手だし、そういうものに心を砕く事自体が下らない事のように思えてしまう。
「ダメだ」と、真澄はため息とともに呟いた。

 

 3
 タクシーに何とか乗り込んで、屋敷の前で降りた真澄は、こみ上げてくるすっぱいもの
を感じた。ダメだ。まだリバースしたらダメだと、自分に言い聞かせふらふらな足取りで屋敷の中に入った。
 玄関で靴を脱ごうと座り込んだ時、一歩も動けなくなる。胸がムカムカとして気持ち悪
かった。今にも何かが逆流しそうになる。
「大丈夫ですか?」
 誰かの声がしたが、顔を上げる事もできず、
「気持ち悪い」と弱々しく口にした。
「ちょっと待ってて下さい」
 その声の主は慌てて、どこかに何かを取りに行った。
ちょっと待てと言われても、真澄は限界だった。必死に込みあげてくる物を押さえようと
するが、納まらない。もうダメだ。限界だ。「おぇー」とした所でゴミ箱が差し出された。
 真澄はゴミ箱を抱き締め、盛大に戻した。間一髪、ゴミ箱以外の場所を汚す事はな
かった。一頻り、出すものを出し終わると、ハンカチを差し出されて、真澄はそれで口を拭いた。
「すまない。助かった」
 顔を上げた瞬間、忘れていた怒りが蘇る。
「北島マヤ!なんでお前がまだここにいるんだ!」
 屋敷中に真澄の怒鳴り声が響いた。
「しー!声が大きいですよ。もう午前一時なんですから」
「あぁ、そうか」と言ってから、更に怒りが込み上がる。
なんで小娘に注意されなきゃならないんだ!彼女を罵倒しようとした所で、次の波が来た。
これ以上情けない姿はさらせないと思うが、ゴミ箱の前で蹲るしかない。
 マヤはそんな真澄の背中を懸命にさすり、優しく介抱していた。
 
 マヤの手を借りて自室に戻ると真澄はベッドに倒れ込んだ。
 気持ち悪さは納まったが、誰かに後ろから頭を殴られたような頭痛がするのだ。
 今夜は飲みすぎた。今なら素直に反省できる。
 マヤはどこからか、真澄のパジャマを持ってベッドの側に来る。
「着替えます?一人で無理ならお手伝いしますけど」
 まるで母親のように真澄の世話をするマヤに腹が立つ。
「勝手に人の部屋を漁るな」
ベッドに倒れたまま、真澄はマヤを見た。
「俺は親父との結婚を認めた覚えはないし、二度と家には来るなと言ったはずなのに、
なんでいるんだ」
 真澄の怒りを含んだ低い声が静かに響いた。マヤは小さな声で「すみません」と言ってから、
意を決したように真澄を見た。
「どうしても結婚を許してもらえませんか?私も英介さんも真澄さんに許してもらって結婚したいんです」
「君はバカなのか。俺は許さないと言ってるだろう」
「どうしてですか?」
「どうしてって、親父はもう棺おけに片足を突っ込んでいるも同然の年だぞ。
そんな老人と24歳の小娘が結婚するなんて、非常識過ぎる。親父と一緒にいたいというなら愛人として側に
置いてもらえばいいだろう。籍まで入れるのは、君が親父の財産を狙っているとしか思えない」
「財産なんて欲しくありません。ただ私は堂々と英介さんと一緒にいたいんです」
 真っ直ぐな目でマヤが真澄を見つめた。その瞳には一途な想いがあった。
もしかしたら財産目当てではないのかもしれない。しかし、そうだったとしても、この結婚は許す訳にはいかない。
さんざん好き勝手やって来た英介がマヤと一緒になって幸せになる事があってはならないのだ。
真澄の母がどんな想いで死んでいったか、それを思うと悔しいのだ。
「なんで君がそんなに親父と結婚したがるのかわからないが、これだけは言っておく。
親父は最低な人間だ。紅天女の打ち掛けの為に妻を殺した男なんだ。
親父が君と結婚したがるのは君が紅天女の上演権を持っているからで、君に惚れた訳ではない。
親父の心はずっと月影千草にしかないんだからな」
 月影千草を愛していたから、英介は強引な手で上演権を奪えなかった。
それは長年、息子として側にいたからこそ、真澄にはよくわかる。
 二年前に月影千草が亡くなり、英介のお供として葬儀に出向いた。妻の葬儀では泣かなかった英介が、
月影千草の遺影を見て涙したのだ。真澄は居たたまれない気持ちになった。
 献身的に仕えた妻よりも、舞台女優の方を愛していた英介に憤りを感じた。
なぜ母と結婚したのか、母は英介と結婚して幸せだったのだろうかと、葬儀の間中真澄はずっと考えていた。
「君は月影千草の代わりにしか過ぎないんだ」
 真澄がそう言った時、マヤが小さく笑った気がした。その笑みの意味がわからず、真澄はじっとマヤを見つめていた。
 一体、彼女は何を笑ったのだろう。まるでそんなのわかっていると言わんばかりの笑みを浮かべて。
「少し顔色がよくなったみたい」
 マヤの手が真澄の頬に触れる。柔らかくて小さな手だった。
「私、そろそろ帰ります」
「それは親父との結婚をあきらめるという事か?」
「まさか」
 マヤが笑う。
「今夜の所は帰るって意味です」
「帰るって、こんな時間にどうやって帰るんだ」
 午前二時を過ぎていた。
「そっか。確かにもう電車はないですね。じゃあ、歩いて帰ります」
 何でもない事のようにマヤが言う。
「何だと?」
 さすがに心配になった。
「と言うのは冗談で、今夜は客室を使わせてもらいます。英介さんに泊まっていけと言われているんで。
でも、真澄さんには出て行けって言われてるし、どうしようかな。私、泊まって行ってもいいですか?」
 真澄は一瞬心配した自分がバカに思えた。別に彼女がどうなろうと知った事ではない。
「勝手にしろ」
「はい。じゃあ勝手にします。おやすみなさい」
 マヤが部屋を出て行く。ドアが閉まると、真澄はため息をついた。
何だか彼女のペースに乗せられている気がする。どうしてか昼間会った時よりも、彼女を憎む気持ちが薄れていた。
「俺は何を考えてるんだ」
 ベッドの上に置かれたパジャマに着替えると、真澄は思考を停止させて眠りについた。



4
 嘘だろう?と、思う事がまさか二日連続で英介の口から聞けるとは真澄は思わなかった。
それは朝食の席での事だ。八人がけのダイニングテーブルの席に座ると、
 「真澄、昨日言い忘れたが、今日から大都芸能の社長をやってくれ」と、いきなり言われた。
まるでテーブルの上のコショウを取ってくれと言われるような気軽さでだ。
「はあ?」
 鋭い視線でテーブル越しの英介を睨む。
「一体どういう事ですか。僕は大都物産で何か大きな失態でもしましたか」
 よりによって大都芸能なんて、大都物産よりも格下の会社になぜ行かなければならないのだ。
明らかな降格人事に納得がいかない。
「そうではない。むしろお前の手腕を買っているからこそ、任せたいんだ。マヤも大都芸
能に所属する事になったし、紅天女に見合う一流の芸能社にしたいんだ」
 また北島マヤかと、真澄は舌打ちする。
「お断りします。僕は芸能事には一切興味がありませんから」
「勘違いするな真澄。これは辞令だ。それを蹴るという事は会社から出てい
くという事だぞ。もうお前の椅子は大都物産にはない」
「いくら会長でも、役員会にもかけないで僕の職を解く事はできないと思いますが」
「お前の進退をかけた役員会なら昨日とっくに開いた。賛成多数で可決され、お前は社長
の任を解かれたのだ」
「何ですって!」
 真澄はテーブルに両手をついて、立ち上がる。
「これは役員たちの同意書だ」
 書類の束を英介は真澄に投げつけた。二十人の重役全てが、真澄の社長退任を認めていた。
 今この場で英介を刺してやりたいと、テーブル上のバターのナイフを見て思う。
 大都物産で社長として働いて八年。重役たちとの間に築いてきた信頼というものは
こうも簡単に壊れるものかと、愕然とした。
 この男が会長でいる限り、権力を握る事は不可能なのだと気づかされる。
英介の都合だけで動かされる人事を受け入れなければいけない立場にいる事を、今日程嫌だと思った事はなかった。
「わかりました」
 断腸の思いで真澄はそう答えた。
今はまだ辞められない。英介から権力を奪い取り、紅天女の打ちかけを燃やす為には、従うしかなかった。
母の為にも復讐は絶対にやり遂げる。改めて真澄はそう心に誓った。



5
 大都芸能は東京都港区のオフィス街にあった。
資本金五千万円、所属タレント数は百人で、芸能会社としては大規模なものであった。
 仕事内容はタレントの育成、マネージメント、プロモーションを中心に、エンタメ事業
も展開していた。その中でも特に演劇には力を入れていて、演劇学校や、劇団も運営していた。そして二千人規模の
客席を持つ劇場を日本の主要都市に十箇所所有している。
 そう聞けば、聞こえは良かったが、会社の実態は赤字が続き、グループ会社の中で一番業績が悪かった。
それでも英介は大都芸能を手放そうとはしない。赤字を埋める為に自らの財産を削り穴埋めまでしていた。
 いつか英介が大都芸能で紅天女を上演する事が夢だと言っていた。役者もスタッフも全て大都芸能に所属している者、
劇場は大都芸能が所有する劇場で上演する。そして、幻の名作紅天女を大都芸能主催で上演したという記録を残す事が、
自らの手で紅天女を上演させたという記録になると、誇らしげに語っていた。
 そんなのクソ食らえだ。英介のエゴを満たすだけにある大都芸能が真澄にとっては無意味な物にしか見えない。
だから、余計に大都芸能にうつる事に抵抗を感じた。
「一流会社にしろだと、くそったれ親父め」
 真澄は大都芸能に着くなり、悪態をついた。エレベーターに同乗していた秘書の水城が形の良い眉を上げ、
呆れたように真澄を見る。
 彼女は大都物産にいた頃から真澄の秘書をしていたので、悪態をついた気持ちはわかっていた。
しかし、社長ともあろう人が社員(水城しかいないが)の前でそのような言動を吐いていいものか。
「真澄様」
 速水社長とは言わず、あえて水城はそう呼んだ。
「何だ」
「そのような言動はお控え下さい。社員のモチベーションが下がります。
私だって今日から大都芸能の社員になったのですよ」
「それはすまなかった。君も道づれにした俺をさぞかし恨んでいるんだろうな」
 いつもはそんな露骨な事を言う真澄ではないが、苛立つ気持ちが皮肉たっぷりの言葉を吐かせた。
「私は別に真澄様を恨んではいません。会長が密かに役員会を開いていた事に気づけなかったのは、私の失態です。
秘書として申し訳なく思います。ですが、大都芸能も面白いではないですか。
業績の悪い会社を立て直せば大都グループ内での真澄様の立場も際立つものになるでしょう。
それとも真澄様は自信がないのですか」 
水城の言葉に真澄は眉をピクリとさせた。相変わらず言いたい事は何でも言ってくれる。
上司だろうと、水城は正しい事は正しい、間違っている事は間違っていると言う。
くさってないで、いい加減ちゃんとしたらどうだと、水城が言っているのがわかった。
「水城君、コーヒーが飲みたい。それから過去五年分の決算報告書が見たい。
まずは赤字部門を知る所から始めようと思う」
「かしこまりました。すぐに手配いします。速水社長」
 真澄の言葉に水城は赤いルージュが引かれた唇の端を上げた。
 
 

6
  昼食を取る暇もなく、真澄は二十階の社長室に缶詰になった。
 水城が片手で食べられるサンドイッチを用意してくれたが、それさえも口に出来ずにいた。
  資料を読み込み、赤字部門の責任者を呼び出し、直接話を聞いていたら、あっという間に太陽が沈んでいた。
もう八時になるのかと、真澄はアンティーク調の柱時計に目をやった。
 机の上は依然として書類の山、応接セットのテーブルにも分厚いファイルが並んでいる。
 過去五年分の資料だけを見るつもりが、赤字の理由を辿っていくと更に十年も前の資料を引っ張り出す事になった。
病巣は思ったよりも根深い。歴代の社長は英介の言いなりになる人形ばかりで、自分の頭で考えて問題を処理する能力が
なかったとしか言わざるを得ない。
 倒産しなかったのが嘘のようだ。奇跡的な会社経営は英介が裏から手を回していた事がわかる。
一体大都芸能にいくらつぎ込んでいるのか。
 そもそも事業を展開しすぎるのだ。黒字部門が赤字部門にガッポリ食われている。
 今すぐ切り捨てなければならないのは、無駄に所有している十個の劇場だ。利益が出ても維持費で綺麗に消えている。
 「俺は劇場を全て切る」
  真澄の言葉に担当者の顔が青くなる。
 「それは無理です」
 「どうしてだ」
 「速水会長が劇場は手放すなと」
 「何だと」くそ親父め!という言葉を辛うじて飲み込んだ。
 「じゃあ、劇団と演劇学校を切る」
  劇場の次に赤字を出しているのはその二つだった。
 「それも会長が」
  男は弱々しく真澄を見る。五十代の男だった。肩書きは部長となっているが、
 会社の利益を伸ばす事よりも、英介のご機嫌を取って出世して来たような男だ。
 真澄はバンと、テーブルを叩いた。ソファに座っていた男を始めとした社員たちが、
 顔をこわばらせる。
 「わかった。今夜はもういい。この件についてはまた話し合いの場を設ける」
  真澄が無表情のまま一気にそう言うと、ソファから立ち上がった。社員たちに背を向け窓際で立ち止まる。
東京タワーがライトアップされているのが見えた。
 「お疲れ様でした」と、真澄の背に声がかかるが、真澄は背を向けたまま何の返事もしなかった。
  何だか疲れた。東京の眩しすぎる街の灯りを見ながらそう思った。
 窓枠に両手を置き、フッと息を吐いた。
  大都芸能初日の勤務は問題が山積みになっている事を知った。
特に一番の問題は英介の影響力が大きすぎるという事だ。どうしたものかと、真澄は思案する。
 「速水社長」と声がして振り向くと、水城が戸口に立っていた。手には盆を持ち、その上にコーヒーカップが乗っていた。
 「悪かったね。初日なのに残業させて」
  真澄は執務机の前に座り、水城が淹れてくれたコーヒーを口にした。
 ホッとする味だった。
 「定時で帰れた事なんて殆どありませんから。どうぞお気になさらず」
 水城の言葉に真澄はコーヒーに咽そうになる。
 「秘書が有能過ぎてね。つい頼ってしまうんだ」
 真澄は苦笑を浮かべた。今日初めて笑った気がした。家を出た時から緊張しっぱなしだったと初めて気がつく。
新しい会社に、新しい人間関係。初日ならではの余計なプレッシャーを背負っていた。
「水城君、初日の感想はどうだ?」
「大変やりにくかったです」
 水城の言葉に真澄は笑う。
「同感だね。よし、ラーメンでも食べて帰るか」
 コーヒーカップを空にすると、真澄は水城を見る。
「残業につき合わせたお詫びに奢るよ」
「嬉しい申し出ですが、生憎この後個人的な予定が入っています」
「それは残念」
「また今度誘って下さい」
「わかった。そうするよ。彼によろしく」
 真澄の言葉に水城が否定せずに微かに笑う。
水城は「お疲れさまでした」と、空のコーヒーカップを持って社長室を後にした。
 真澄は昼間水城が用意したサンドイッチにかじりつきながら、何となく机の上のファイルを開いた。
 それは所属タレントのプロフィールが載ったものだった。
ゆっくりとした動作でページを捲り、ぼんやりとタレントの名前を眺めていた。
「……北島マヤ」
 その名前を目にすると、手が止まった。食い入るようにマヤのプロフィールを見ていく。
出身は横浜で、ラーメン屋で住み込みとして働く母親に女手一つで育てられたとあった。
その母も高校生の時に病死して、天涯孤独の身だと記されている。
 意外な気がした。マヤが持つ、明るい家庭で育ったと思わせるような和やかな雰囲気が合わない気がした。
「別に彼女が天涯孤独だろうと、関係ない事だ」
 そうは言いながらも、マヤの事を気にしていた。
今朝も朝食の席にてっきりいると思っていたマヤがいなかったので、肩透かしに合ったような気がしたのだ。
 朝倉に聞くと、マヤは真澄に遠慮して明け方に帰ったとの事だった。遠慮なんかするような子には
見えなかったから、それもやっぱり意外だった。
 不意に背中に触れたマヤの手の温もりを思い出した。
あんな風に優しく誰かに背中をさすってもらった事はなかったかもしれない。
「何考えてるんだ。彼女は俺の敵だ」
 真澄は我に返ったようにファイルを閉じ、いい加減帰らなければと腰を上げた。
柱時計は午後九時を指していた。



7
 帰宅の足に社用車を使わなかったのは、歩いていける場所に用事があったからだ。
だからビルの正面玄関を出た所で、北島マヤと会ったのは予定外の事だった。
「こんな所で何をしてるんだ」
 歩道の街路樹に隠れるようにして佇むマヤを見て、思わず速水は声をかけていた。
「あっ、真澄さん!」
 マヤが弾かれたような笑みを浮かべる。ロング丈のニットガーディガンとジーパンというカジュアルな服装だった。
「夕方会社で打ち合わせがあって、それで少し待ったら真澄さんと一緒に帰れるかなと思って」
「少しって、何時から待ってたんだ?」
「7時ぐらいかな」
「もう9時だぞ」
 真澄は苦笑を浮かべる。
「会社の外で二時間も待つなんて、風邪でもひいたらどうする?社長室に一言連絡くれればいいだろう」
 10月の半ばを過ぎていた。このごろは朝晩の冷え込みが強くなっている。
「そんな事したら、真澄さん私から逃げちゃうでしょう。だから不意打ちを狙ったの」
「思ったよりも君は策士だな」
 真澄は微かに口の端を上げる。どうした訳か、思いがけずマヤに会えた事を喜んでいた。
年下らしからぬ、親しげな喋り方も何だか甘く響いた。
「迷惑でしたか?」
 マヤは心配気味に真澄を見上げた。親しげな調子から一転した敬語と、
不安そうなマヤの表情に、真澄は胸をドキリとさせられた。
「いや」と、答えるだけで精一杯だった。それぐらいマヤの変化に動揺した。
「良かった」
 パッとマヤが満面の笑みを浮かべる。それはホッとさせる笑顔だった。
仕事でくたくたに疲れた後に見るには毒過ぎる。つい心を許してしまう。
「ラーメン」
「えっ」
「ラーメンでも食べに行くか?二時間も待ってくれたんだ。奢るよ」
 一人で食べに行くつもりだったが、うっかり調子のいい事を口にしてた。
 マヤが更に嬉しそうな笑みを浮かべる。
「丁度食べたかったんですよね。わーい。やったー」
 無邪気に喜ぶ姿を見て、今度は胸が高鳴った。一体どうしたというのか。
訳のわからない感情にさっきから捕らわれている。
「行くぞ」
 真澄は歩道をスタスタと歩き出した。
ライトアップされた銀杏並木が綺麗だと、マヤが真澄の隣を歩きながら話す。
 彼女の頭の位置は真澄の肩口の辺りにあった。だから、マヤが真澄を見る時は
上目遣いで見るしかない。その表情が街の灯り越しに可愛く見える。
 地味な子だと思っていたが、女優だけあって表情は豊かだ。特に笑った顔が真澄の目には魅力的に見えた。
感情のまま、何かを見て嬉しそうに笑う顔を見ると、見ている方もウキウキとさせられてしまう。
 それに、真澄と一緒にいて心から楽しいという顔をするのだ。
随分と酷い事を言ったのに、彼女は少しもその事を気にして、真澄を恐れている様子がない。
 図太いのか、我慢しているのか。真澄にはわからなかった。



 8
 真澄がマヤと最後に会ってから三日が経っていた。
信じられない事に、仕事中でも無意識のうちにマヤの事を考えていた。
「水城君、用意して欲しいものがある」
 水城がコーヒーを持って社長室に入って来た時、真澄は無意識に口にしていた。
「何でしょうか?」
 水城はコーヒーを置くと、スーツの上着のポケットからメモ帳を取り出した。
仕事でメモを取る事はかかさなかった。秘書として当たり前の事だと、先輩に教えられてから、
水城はこの十年その教えを守り続けている。
「いや、いい」
 北島マヤと口にしそうになって、真澄はハッとした。そんな事水城にさせる仕事ではないとすぐに思い直した。
「そうですか。他に御用は?」
「ない」
「失礼します」
 水城が真澄に背を向け戸口に向かって歩く。その背中を見て気持ちが焦った。
「やっぱり」と、真澄は声を落とした。
「何でしょう?」
 再び水城は真澄の方を振り返る。
「き、北島マヤが出た舞台の映像が見たい。彼女はうちの看板女優だから、
社長としてどんな仕事をして来たか見ておきたい」
 もっともらしい理由をこじつけて、真澄はやや早口で言い切った。
「北島マヤですね」
 水城はメモ帳に名前を書き込む。
「あぁ、集められるだけ集めて欲しい」
「かしこまりした。すぐに手配いたします」
 水城が社長室を出て行くと、真澄はホッと胸を撫で下ろした。
マヤの名前を口にする事は妙な緊張感を持たせる。それは中学生の頃に
気になる異性の子に声を掛けた時のような感情に近かった。
 これじゃあまるで、北島マヤに気があるみたいじゃないかと、真澄は自分自身に反論する。
舞台の映像を見るのは社長としての仕事だと、真澄は自分に言い聞かせた。

 水城が真澄に頼まれたものを紙袋に入れて持って来たのは、二時間後の事だった。
「これが劇団つきかげの公演で『若草物語』。映像として手に入るもので、
北島マヤが舞台に立ったのはこれが最初です。詳しくは資料をご覧下さい」
そう言うと忙しそうに水城は社長室を後にした。
 真澄は資料をじっと見つめた。それはマヤが舞台に立った順番に書かれていた。

『若草物語』ベス役、
『たけくらべ』みどり役、
『ジーナと五つの青いツボ』ジーナ役
『嵐が丘』キャサリン役 
『奇跡の人』ヘレン役
『大河ドラマ 天の輝き』沙都子役
『真夏の夜の夢』妖精パック役
『二人の王女』アルディス姫役
『忘れられた荒野』狼少女ジェーン役
『紅天女』阿古夜役

「二時間でよくここまで調べたものだ」
 水城の手際の良さと、北島マヤが演じて来た幅広い役柄に感心した。
紙袋の中を見るとDVDがマヤの出演した順に並んでいた。これをいつ見るか。
今見てしまうと、仕事の手が止まる気がした。
「仕事を片付けてからだな」
 真澄は後ろ髪をひかれる思いで、紙袋をデスクの引き出しに仕舞うと、パソコンに向かった。

 

9
 「どうしたんだ」
 三浦の声に真澄は遠くに行っていた意識を呼び戻す。
 バー「ブルーノート」にいた。BGMにかかっているのは、ジョンコルトレーンの名演奏
「マイ・フェバリット・シングス」だという事がすぐにわかる。切れのあるサックスが鳴り響いていた。
「どこかに心を置き忘れて来たか」
 茶化すように三浦が言う。三浦がそう言うのも肯ける程、真澄はぼんやりとしていた。
三浦が話しかけてもずっと黙ったまま、グラスの中の琥珀色の液体を眺めているだけだ。
「何があったんだ」
 あまりに返事のない真澄に三浦は本気で心配しだす。
「何でもない」
 真澄はようやく口を開いた。
「ただ、どう受け止めたらいいのかわからなくて」
「何を」
「観たんだ。北島マヤが出ていた舞台を」
 若草物語のベスから始まり、紅天女の阿古夜までを二日かけて見た。
こんなに心が持っていかれた経験は初めてだった。
マヤの演技は時に情熱的であり、冷淡であり、勇ましくあり、可憐だった。
一人の人間がここまで違う役を演じられるのかという事に感動した。
紅天女だけは実際に劇場で観たが、映像で見ても神秘的な天女の演技や、
阿古夜の可憐な乙女の心が真っ直ぐに伝わってくるのだ。
特に仏師一真に恋心を打ち明けるセリフを聞くと、まるで自分に言われている気がして、胸が掴まれる想いがした。
「それで」
「思った以上に凄い役者だった」
「じゃあ、親父さんとの結婚認めるのか」
 三浦の言葉にカッと胸が熱くなる。
「認める訳ないだろう!」
 思わず大声で怒鳴っていた。店中の客が一瞬真澄に視線を向ける。
三浦は呆れた顔で真澄を見る。
「惚れたのか」
 図星過ぎる言葉だった。
「そんな訳ないだろう。11も年下の女優なんて趣味じゃない」
 真澄は力強く否定した。そうしなければうっかり、認めてしまうからだ。
「随分と熱くなってるけど、速水は冷血漢が売りだったんじゃないのか」
 三浦が笑う。自分でもそうだと思っていた。一人の女性に対して熱くなる事なんて三十五年生きてきてなかった。
「不器用な男だな」
「どういう意味だ?」
「親父の恋人に惚れちまう所がさ。女なんて他にも沢山いるのに」
「俺は惚れてなんて」
否定しようとして、そんな嘘が三浦にバレバレなのがわかった。
真澄はウィスキーを呷る。
「奪うか」
 グラスを置くと、真澄は何となく思いついた言葉を口にした。
口にしてみると、その言葉は水の中に投げ入れた石のように、心の中に波紋を広げていく。
 このまま北島マヤと英介の結婚を許す訳にはいかない。マヤが英介の妻となって家にいるのを
何も出来ずに見ているなんて耐えられる訳がない。
 今でもあの老人に抱かれていると思うと、反吐が出る。マヤが憎い英介と一緒にいる所なんて見たくもない。
「三浦、二人の結婚を潰すには北島マヤを誘惑しろと言ったよな」
「その気になったのか」
「俺はどんな手を使ってでもこの結婚はさせない」

 


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2014.11.8
Cat




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