二年目のプレゼント

AUTHOR たまニャン





不安、焦り、迷い、悲しみ、孤独、全てを棄て去り、あなたの腕に飛び込んだ。
あなたの愛情が、私を満たしてくれた。幸せだった。

お芝居が好き。
あなたが好き。
お芝居をしている時は、生きてるって思えるの。
あなたといる時は、生きてるって思えるの。
あたしの情熱、全てあなたにぶつけた。
受け止めてくれた・・・!
嬉しかった。
あたしの魂の片割れ・・・
陰陽相和する時、人は神になる。
新たな生命を産むために・・・


マヤと真澄が結婚して早くも2年が経とうとしていた。
マヤは唯一の紅天女女優として、真澄は大都芸能社長として、多忙ながらも、ようやく手にした幸せを実感しつつ、充実した日々を送っていた


紅天女の定期公演を終えたばかりのマヤは、2週間の休暇に入っていた。

「速水さん(未だに・・・)、今日はあたしの誕生日だから、定時には会社を出るって言ってたけど・・・
定時って何時だろ?」(ぉぃ!)

携帯の時間を確認すると17時を過ぎていた。

その時、手にしていた携帯が着信音を発したため、マヤは慌ててしまい携帯をすっ飛ばしてしまった。
慌てて拾い上げて、ディスプレイを確認すると

「速水さんだ・・・」

マヤが出ると真澄の声が聞こえてきた。

「マヤか?悪い、今日は早く帰るつもりだったが、
トラブルで急遽、京都に行くことになった・・・一泊するから今夜の予定はキャンセルだ・・・。いつもの事ながら、済まない。」

申し訳なさそうに言う真澄の困惑した顔が目に浮かぶ様で、マヤは思わずクスっと笑ってしまった。
「お仕事だったら仕方ナイです。あたしの事は気にしないで行ってきて下さい。」

「そうか・・・俺は久しぶりに君と食事が出来ると思って楽しみにしていたんだがな・・・
取り敢えずプレゼントだけでも今日中に間に合うように、手配してあるから・・・本当に済まない。この埋め合わせは必ずするから。」

そう言って電話は切れた。

速水さんったら・・・プレゼントなんて要らないって言ったのに・・・マヤはフゥと小さなため息を吐き出した。

定期公演の千秋楽まではマヤも忙しくしばらく真澄とまともに話す時間が無かった。だから誕生日に何が欲しいか聞かれた時にマヤは

「あの・・・速水さんとお家でゆっくりしたいです。」

と言っておいた。

「あたしだって、楽しみにしてたのに・・・」

ピンポンと来客を告げる音がした。

インターフォンに出てみると花屋に扮した聖の姿があった。

「聖さん!今開けますね。」

マヤは急いでオートロックを解除した。

「マヤ様お久しぶりです。定期公演お疲れ様で御座いました。」

「これを・・・紫の・・・いえ真澄様からマヤ様へお誕生日のプレゼントで御座います。」
「真澄様が出張の為、私からお渡しする様に、仰せつかりました。」

聖は紫のバラの花束とケーキの箱、大小様々なプレゼントをマヤに手渡した。

真澄から直接紫のバラを貰うようになっていたので、聖に会うのは久しぶりだった。

「ありがとうございます・・聖さん。」

「?」

以前と同じ、弾ける笑顔を期待していた聖は、マヤの表情が気になった。笑顔を浮かべてはいるが、何処か憂いを帯びている。

「マヤ様、どうかされましたか?
何か心配な事でも、おありですか?」

直接会う事は無かったがマヤが真澄と結婚してからも、真澄の命により聖は時々マヤの動向を見守っていた。

真澄との関係を公にしてから、特に結婚してからマヤは美しくなった。真澄の愛情を一身に受けて、大人の女性として光輝くようになったと、聖は思っていた。
だから自分の誕生日にプレゼントを渡されて、こんな屈託のある顔をされるとは思ってもみなかったのである。

「いえ、心配な事なんて・・・何も
わざわざありがとうございました。」

「いえ、でしたら私はこれで・・・」

失礼しますと言いかけたところで

「あ、あの・・・
聖さんは今夜の速水さんの宿泊場所をご存知ですか?」

マヤは真っ赤な顔をしている。

「? はい。存じております。」

「今から京都に行けるでしょうか?」すがる様な瞳で聖の上着をギュっと握る。

ああ

「大丈夫ですよ。新幹線なら今日中に着けます。」

「でも、速水さん、お仕事だからあたしが行ったら、迷惑ですよね。」
と、俯いてしまった。

そういう事か

聖はフっと優しい笑顔を浮かべ

「お行きなさいませ。マヤ様」
「駅までお送りしますのでそこからひかりに乗って頂いて・・・」

「宿泊場所はホテルグランディアです。駅から徒歩2分程の場所に御座いますので直ぐ分かると思います。」

「あ、ありがとうございます。」

そこで、マヤは初めて嬉しそうに笑った。

「じゃあすぐに支度します。30分後に、もう一度来て頂けますか?」

「分かりました。その間に京都までのチケットを手配しておきましょう。それと真澄様にも、ご連絡を・・・」

「あっ、速水さんには内緒・に・・・してもらえませんか?ちょっとビックリさせたいので」

必死な顔が愛らしく聖はもう一度笑った。

「分かりました。所用が終わったらまっすぐホテルに戻る様にだけ伝えて置きましょう。」

今度こそ

「失礼致します。」

とマンションのドアを閉めた。

Message body マヤは急いで出掛ける準備をした。
本当は真澄がいつ帰ってきてもいいように、メイクも済んでいた。
一泊分の着替えを小振りのボストンバックに詰め込んだ。


聖の用意してくれたチケットで新幹線に乗り込みマヤは真澄のいる京都へ向かった。

(速水さん、ビックリするかな・・・
あたしが会いに行ったら喜んでくれるかな・・・それとも仕事の邪魔だって怒られるかも知れない。)

そう想いながらもマヤは楽しくなって来た。

(もう少しで逢える・・・)

今朝、玄関先で「いってらっしゃい」と見送ったばかりである。明日になれば帰って来るのも分かっているのに、真澄に会いたくて仕方が無かった。
(良いよね、だって今日は誕生日だもの・・・)

新幹線が京都に着いた。11時近い。

(まだお仕事終わってないかもしれない・・・)
そう思いながら、聖に教えてもらった部屋のドアをノックする。

ガチャリと音がしてドアが開いた。

「マヤ、どうしたんだ。どうしてここに・・・」

ネクタイを緩め驚いた表情の真澄がいた。

「ゴメンなさい。あたし速水さんに会いたくて・・・」

マヤは真っ赤になって俯いてモジモジしている。

「そんな所に突っ立ってないで、入りなさい。」

うでをグィッと掴まれてマヤは部屋の中に半ば引っ張り込まれ、次の瞬間にはギュっと真澄の胸に抱きしめられていた。
少し目を細め優しい笑顔を浮かべてマヤの顔を覗き込む真澄。

「全く君にはいつも驚かされるよ、マヤ。」

「だって今日はあたしの誕生日だから、速水さんからプレゼントもらわなくっちゃって・・・」

「聖に頼んであったんだが、すれ違いになったのか?」

「違うの!聖さんはちゃんとプレゼントを届けてくれたの・・・だけどあたしが欲しかったのは、速水さんだから・・・会いたくて・・・そばに居たくて、それで、あたし・・・」

最後まで口にする前にマヤの唇は塞がれていた。

「何だか、俺がプレゼントをもらったみたいだな。」

ようやくマヤの唇を解放した真澄がマヤの耳元で囁いた。

「あたし、もう一つ速水さんから欲しい物があって・・・」

マヤから欲しい物があるなんて初めてのことだったので真澄は驚いた。

「何だ?何が欲しいんだ。俺はまやが望むことなら、何でも叶えてやりたい。」

「私、あたし・・・速水さんの・・・あたしたちの、赤ちゃんが欲しい・・・」

耳まで真っ赤になりながらも瞳を大きく見開いて真澄を見上げるマヤ。

「っ、マヤ!!」

ああ、駄目だ、完敗だ。真澄はマヤを抱き上げると軽々とベッドに運び込んだ。
そっと降ろして再び抱きしめると胸の中の一つ人生最大のプレゼントを二度と手放したりしないと、ちかうのだった。

END



 

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【Catの一言】
たまニャンさん、初投稿ありがとうございます。
「赤ちゃんが欲しい」の一言がとっても甘かったです。
結婚二年目にして「速水さん」と呼ぶ、マヤちゃんが何かマヤちゃんらしいです。

タイトルのもう一つの候補の方も良かったのですが、赤ちゃんが欲しいというネタバレに
つながりそうだったので、「二年目のプレゼント」を採用しました。

2015.2.12




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